Child on the Steps - 2/9

警察病院の白い廊下に目立つ朱色にまず目がいって、大きな両翼、ヒーロースーツとは異なる私服、エンデヴァーとの遭遇に珍しく驚いたらしい顔、と見て取ってから、ヒーローとしてはさほど体格がよいわけではない青年の両腕や肩にしがみついた子供達に目を向ける。
いずれも就学前の年頃の、男の子が一人、女の子が二人。髪や目の色はそれぞれ異なったが、共通していたのは青年と同じく、その背に鳥の翼を有していたことだった。
なるほど、と思ったところで、ホークスがぶんぶんと首を振った。
「誤解です!」
「しとらん」
一番小さな女の子一人だけならば、隠し子がいたのかと思いもしたかもしれないが、顔立ちの全く異なる同年代の子供達、しかも手足に包帯を巻いているとなれば、病院の入院患者だろう。
これが一般的なヒーローならばボランティア活動中、と判断するが、この掴み所に困る若者の場合、油断はならない。
「ちょっと俺が関わった案件で入院してる子達で、たまに様子を見に来てるんです」
「そうか」
もっともらしいが、都内と九州の距離を越えて来ている理由には少し弱い。
それを突いて隠し事を暴くのが得策かを考え、面倒ごとが増えるだけだと結論づける。
「エンデヴァーさんは?」
「警察関係者の知人が入院していてな。見舞いがてら、話を聞きに」
「エンデヴァーさんって、案外そういう繋がり持ってますよね」
長年の活動で多少は培われたものだ。
デビューして五年程度で九州を本拠地としながら、日本中に情報網を張り巡らせ、ヒーロー未満の学生の情報まで押さえているような男は、エンデヴァーの持つコネクションを軽く凌駕しているはずだ。
じろり、と睨んで黙らせようとすると、当人は全く恐れ入らなかったが、彼にしがみついていた子供達が怯えた。
「あー、大丈夫大丈夫、ほら、エンデヴァーさんだよ」
「あ、ホントだ、エンデヴァーだ!」
「火のおじさん!」
少し年嵩の二人は火を纏っていないエンデヴァーに気づいたが、白い翼の一番小さな女の子はぐずりながらホークスの手にしっかりとしがみついた。
「こわいー」
「コワクナイヨ、ヤサシイヨー」
「あやすならもう少し感情をこめろ」
余計怖がらせているだろうが、とふざける若造に唸ると、やはり当人には威圧にもならなかったが、少女は完全に怯えきった。
「っと」
ぱたぱたと必死で翼をはためかせ、よたよたと天井近くまで浮き上がった少女を追って、ふわりとホークスも身を浮かす。
彼の大きな翼で本気で羽ばたけば、狭い廊下は大惨事になるだろうが、その自在に操れる剛翼で身を浮かせただけなのだろう。するりと器用に少女の下に回り込んで、飛ぶのに慣れていない雛鳥が落ちる前に抱き留める。
「こーら、ダメでしょ、建物の中で飛んじゃ。それにまだハトは先生がいるところじゃなきゃ飛ぶ練習もしちゃダメ」
「だって……、こわい人」
「こわくないよ」
ね、と少女を抱き込んだまま、逆さまの体勢でこちらに笑いかけてくる男に渋面になる。
顔に大きな傷跡のある大男が怖くないはずがない。幼児のご機嫌をとって笑いかけたところで、大泣きされるのが目に見えている。
「帰る」
「おつかれさまっしたー。今度は飯食いましょー」
軽薄な挨拶が追ってくるが、返事も振り向きもせずに進めば、背後で軽佻浮薄を体現したような若者と幼児のやりとりが続く。
「……ホークス、ケッコンしてくれる?」
子供の他愛なくも独占欲の表れた問いに、どう応じるのかと思えば、調子のよい声は一瞬も言い淀まなかった。
「ハトが大人になったときに、同じ事言ってくれたら考えよっかな」
言われているのが幼い頃の自分の娘だったなら、宙からはたき落としていたかもしれない、と思いながらエンデヴァーはその場を後にした。

「ホークスさんが最近関わった事件、ですか?」
膨大な量になりますが、と応じたサポートスタッフに、子供の関わる事件を、と言い足せば、警察に送った問い合わせに数件の回答があった。
一つは捜索願いの出た迷子を見つけ出したささやかな事件で、もう一つは小学生の女児を狙った変質者の未遂での逮捕、最後の一件が探していた事件だった。
「これは酷い……」
概要に目を通したスタッフが顔を曇らせ、エンデヴァーも眉を寄せた。
未成年者、しかも幼児を対象とした人身売買組織の摘発だ。いわゆる異形系、人本来の姿から少し異なった外観を持つ子供達を集めて、珍種のペットのように売りさばいていたという。
「有翼タイプの子供を多数保護……」
ホークスにしがみついていた子供達が、その保護された子供なのだろう。
エンデヴァーの姿に怯えた少女は、かなりのトラウマを刺激されたのではないかと、今更ながら気づくが、同時に本当に子供に悪影響があれば先にあの敏い若者が対処していただろうとも気づく。
「あの小僧は……」
いけ好かない生意気な若造だが、有能さに異論はない。
頭の回転の早さと、汎用性の高い器用な個性を使いこなし、他者の追随を許さず最速で今の立場まで上り詰めてきた。
速すぎるという賞賛の中には、彼は足並みを揃えず省みないという揶揄も込められている。
事件を次から次へと解決していくが、食い散らかして他人に後始末を押しつけているだけだ、という的外れな非難も聞いた。
どちらかといえばエンデヴァーもそのタイプで、自身は場の制圧に特化して、後の処理はそれが得意なものに任せる。適材適所に人員を配置し、最適なやり方で事件に対処する手法で、エンデヴァーは事件解決数最多を誇っている。
自分がもう必要でない場に留まるのは無駄でしかない。
おそらく、この点に関してはホークスというヒーローはエンデヴァーと同じ考え方をする。
彼が、次の事件に目を向けず、助けた子供達の周囲をまだ警戒しているという事は。
「この事件、まだ終わっとらんな」
「そうですね、子供達の救出を優先したために、首謀者が捕らえられていません。警察が今必死で捜査中のようですが」
詳しく追うか、と問われて、情報は集めておくよう指示する。
「本当にあの小僧は……」
また一人で抱え込んで警察にも共有していない情報もあるのだろう、とエンデヴァーは舌打ちした。

「あれ、またお見舞いですか?」
今日はヒーロースーツ姿で病院の中庭で子供達と遊んでいたNo.2ヒーローが、人懐こく笑いかけてくるのをじろりと睨む。
「貴様に会いに来た」
苦々しく告げると、青年は快晴の冬空を見上げ、悲しげに肩越しに己の翼を見やった。
「濡れると重くなるんで、雨、嫌いなんです」
「降らん!」
からからと笑ってみせるホークスのペースに巻き込まれないよう、一度息を吐いてから話があると告げると、不意に真顔になった青年はちらりと駆け回っている子供達に目を向けた。
「貴様、何を警戒している?」
「あのくらいの子、目を離したら危ないでしょ。使いこなせない個性で大人が一瞬目を離した隙に、取り返しつかなくなるなんてザラですよ」
耳目がいくつもあるかのように、全体を俯瞰して対応できる彼がいれば、この中庭で危険はありそうにないが。
「ホークス」
「……」
「知っていることを全部吐け」
「フツー、なんか交換条件とか提示しません!? せめて自分の持ってる情報開示とか!」
「俺が知っとる程度のことは、貴様はもう承知の上だろう」
「なんだろう、居直りかつ傲慢なだけなのに、ここまで堂々とされると、めっちゃかっこよく思えてくる?」
「ホークス」
重ねて呼ぶと、ベンチの上で足を抱えた若者は口角を大きく下げたが、やがて口を開けて嘆息した。
「あの子らが何でここにいるかってのは、もう調べました?」
「保護されたのは七人のはずだが、他の四人は別の病院か?」
「いえ、親元に返しました。子供が誘拐されて半狂乱になってた親のところに無事戻って、感動の再会。今頃、地元の病院にカウンセリング込みで通ってると思いますよ」
「……あの三人は?」
「親が組織に売ったんです、返せんですよ」
鋭さを増した猛禽の瞳がエンデヴァーを捉えて、口元だけで笑ってみせた。
「そんな珍しい話でもないです、高く売れるんですよ、羽付きは」
ほら、と笑って自身を指差す。
「俺、天使みたいでしょ?」
「…………」
「反応! なんかリアクションください! スゲー滑った感やめてください! 俺、子供の頃は可愛すぎってお姉さん方にモテモテのリアルエンジェルでしたからね!?」
自身の膝を叩いて自己アピールする鳥人間は、そのヒーロー名の通り鷹に似た眼光の持ち主で、あまり可愛げはない。
「まあ、特にあの一番ちっちゃい子、ハトって言うんですけど、羽も白くて髪の毛ふわふわ、天使ってイメージまんまでしょ」
それは分かる、とうなずくと、今ひとつ反応の掴みきれない若者は少し拗ねた顔をした。
「めっちゃ高値つきます。ああいうのをペットにしたいって変態は山程いるんです、親が率先して売るような家庭環境なら親戚筋も推して知るべしってなもんですし、下手なところには預けられんです。施設移動してる間に子供が消えたなんて珍しくもないですし」
入院扱いにしておくにも限界がある、と珍しく苦い顔をする。
「今回、俺が抑えたのは子供達を監禁してた倉庫なんですよ。できれば組織の全貌掴んでから踏み切りたかったんですけど、商品移動直前で、出荷されたらもう二度と見つからない可能性が高かった」
まずは被害者の保護を優先した、捜査班の苦渋の選択があったことは、報告書を見れば読み取れる。
「なんで、まだ倉庫の見張りくらいしか捕まえられてなくて、これがまた何も知らない下っ端で。組織の方は丸々残しちゃったんですよね」
「全く掴めていないわけではあるまい?」
「何ていうか、小規模取引で掴みにくいんですよねー。取引は闇サイトのオークション上で完結。手に入れたら即出品、落とされたら取引して出荷。いや、もう個人のネットフリマか、みたいな。今回たまたま七羽まとめてほしい、なんて無茶な取引だったみたいで、強引に攫われた子達の真っ当な親が即届け出て、各地の警察が連携して発覚しました。どうも、羽付き専門でやってるな、ってことで、羽付きヒーローの俺にも声がかかりまして」
相変わらずへらへらと笑っているが、これは特に本心というわけでないのは分かるようになってきた。
「取引履歴を見る限り、そっちの界隈でそれなりに信頼と実績重ねて長年やってきたみたいです。基本的に扱うのは就学前の羽付きの可愛い子。子供がいなくなっても親が騒がない、もしくは進んで売るような環境の子をうまく選んでます。ぶっちゃけ、うますぎるくらいに」
「どういう意味だ?」
「羽付きの子って、全国にどのくらいいると思います?」
「そこまで珍しい個性ではないと思うが……」
「外見は大体人間、背中にだけ鳥の翼、って限定したら?」
個性は遺伝するが、現れ方はまた個々に異なる。背に翼のある親の子が頭部が鳥になる例もあるし、手が翼化することもある。
ホークスのような、いわゆる彼の自称する天使のような外見と限定すると、かなり数も限られてくるだろう。
「その上で、個性がある程度安定して外見が確定した、小学校に上がる前の子供、更には家庭環境に問題あり。これ、どうやったら的確にピックアップできますかね?」
「何らかの公機関から情報が洩れていると?」
「一番精度が高いのは小一の時の一斉個性登録ですけど、狙われてんのがその前の年齢なんですよね。新生児の各検診情報が怪しいってのが捜査チームの見解です」
そんな情報が犯罪に用いられているのだとしたら、一大事である。
「今、警察が本気出して捜査してくれてるんで、その結果待ちですね」
プロヒーローは犯罪抑止に個性の行使を許可されているだけであり、警察の協力要請の外で捜査することはできない。ホークスの情報収集力は個性に拠るものではないから、捜査そのものに関わることはまずないはずだ。
「……貴様、今ここで何をしている?」
警察組織に捜査を任せているのなら、この男は連日この病院で何をしているのか。
じろりと睨み据えると、鳥じみた仕草で首をすくめるが、何の威圧にもなっていないことは知っている。
「お察しの通り、囮です」
口元だけが大きく笑う。
「行くあてのない、消えても熱心に探されない、可愛い顔の羽付きなんて、ちょっと無理してでも取り返したい高額商品でしょ。のこのこと出てきたら捕縛して芋づる式に組織挙げられたらいいなーって感じの、ちゃんとした捜査は警察にお任せした雑な計画です」
「ふん……」
妙に露悪的な態度がらしくない。
「……何ですか?」
「悪ぶるのは、子供っぽいぞ?」
「ハイ!?」
跳ね上がった声に、珍しく動揺させたことを知る。
「要するにあの子達にはまともな保護者がいないまま、扱いが宙に浮いているんだろう。面倒を見るのに割く人員もない。そして、人身売買組織が子供達の状況を把握してもう一度攫いに来る可能性があるから、貴様が監視と護衛についている。特に恥ずかしがるような事情はないと思うが?」
「あー、えーと、そんな、キレイな話でもないかなーと」
ぱたぱたと落ち着きなく赤い翼が左右に開閉するのは、何やら決まり悪いらしい。
「悪ぶってみせるほどのことでもないだろう」
ばさり、と一つ羽ばたいたウイングヒーローがベンチの背に止まった。
「行儀が悪い」
「あ、スイマセン」
一喝すれば聞き分けよくベンチの座面に戻る辺り、この男は捻くれている割には素直である。
「状況は理解した」
「どーも……」
珍しく疲弊した顔をして応じたホークスに、何か協力することはあるか、と問うと、またぱたりと翼が開閉した。
「あー、えーと、あ! 俺がどうしても来れない時とか、チビ達の面倒見てください」
「分かった、人手を用意する」
「じゃなくて、エンデヴァーさんが来てくれると嬉しいなーって」
「向いとらん」
子供受けのするサイドキックを向けると言っているのに、ホークスはいつものにやついた表情で首を振った。
「羽付き達に笑顔で囲まれるエンデヴァーさんの図が見たいんじゃないですか!」
「囲まれん! 泣かれて逃げられるだけだ!」
「そんなことないですって、エンデヴァーさんキッズに大人気ですから。微笑ましい写真撮ってSNSに上げて、お茶の間のNo.1好感度上げましょうよ」
本日、この生意気極まりない若者を一瞬やりこめた気がしたのだが、全くもっていつも通りである。
「見せてくださいよ、エンデヴァーとエンジェル!」
「やかましい!」
戯けたことを囀っていたホークスが、不意に口を噤んでベンチから立ち上がった。
ごまかすな、と吠えかけて、遅れてエンデヴァーも異変に気がついた。
遠くで女の叫び声と、子供の泣き声が聞こえる。
羽ばたきの音を一つ残して姿を消したホークスの後を追って、エンデヴァーも駆けだした。

「どうした!?」
速すぎる男を見失って、騒ぎに集まりはじめていた病院関係者達に声をかけると、突然現れたNo.1ヒーローの姿に驚いた顔をしつつ、揃って頭上を指し示す。
見上げれば、葉が落ちて枝が剥き出しになった樹上の高い先端にしがみついた白い翼の女の子の前に、紅い翼のヒーローが浮いていた。
風もないのにその身の回りを羽根が複数枚舞っているのは、どんなトラブルにも対応できるようにだろう。
「あの女の子、まだあまり飛べないんですけど、何かに怖がって登ってしまったようで……」
最初にその様子を見つけ、降りるように説得していたという看護婦の説明にうなずく。ウイングヒーローに任せておけば、特に問題はなさそうである。
少女に懐かれている男は、おそらくいつものように軽い口調で何か話しかけながら手を伸ばしたが、怯えた顔で身を引いた少女に僅かに表情を変えた。
「イヤ! おりたくない!」
笑顔を保ったまま、ホークスの周りを取り巻く羽が数を増した。
細い枝にしがみつきながら首を横に振り、嫌、怖い、降りたくないの三つの言葉しか繰り返さない少女と、それを宥めすかすホークスを、人命救助に向かない個性のエンデヴァーは無為に見上げるしかない。
「いやー!!」
一際大きく泣き叫んだ瞬間、手を滑らせたのか、少女の手が枝から離れた。翼の使い方がまだ覚束ない少女を受け止めようと、ホークスが手を伸ばす。
「ホークス、枝が消えた!」
手を滑らせたのではない、彼女が掴んでいた枝の部分が消失したのだと叫ぶと、こちらを見た目に一瞬のうちに様々な色が過ぎった。
未知の個性が発動していることに対する理解と、目の前で落下する小さな身体、伸ばしたかけた己の手。
それらを並べて、迷う時間など許されない。
そんな心の動きが手に取るように分かるのは、彼がこの意味においてだけは己と同種の生き物だからだ。
「バ、カモノがぁ……ッ!」
ヒーローという、実に馬鹿げた生き物を罵倒しながら、少女の身体を抱き込んだ青年が背の翼を散らしながら短い距離を落下した地点に走り込み、大量の羽根をクッションに着地したホークスの襟首を掴んでその空虚な感触に慄然としながら少女から引き剥がす。
「個性抑制処置を!」
不用意に子供に触れるな、と指示すれば、個性暴走に慣れた病院スタッフが機材を取りに走る。
「ホークス!」
舞い上がった紅い羽根が、空気に溶けるように消えていく。
掴んだ上着は空っぽで、黒いインナーとズボン、靴が着込んだ形そのまま地面にわだかまっていた。
彼が受けた個性の種類として考え得るものは、転送、縮小、消滅。
先に消えた枝がどうなったのかが分かれば、対策の仕様もあるのだが、と少し背の低くなった木を睨みあげる。
「全体的に、小さくなっている……?」
枝の一部が消失したのではなく、全体の枝ぶりが縮んでいると把握して、縮小の可能性が高いと判断する。
「ホークス、いるか?」
呼びかけつつ、どれだけ小さくなっているか分からない相手を探して、慎重にわだかまる服に手を伸ばすと、触れる前に黒い布地が揺れた。
数ミリサイズまで縮んでいるようなことにはなっていなさそうだ、と僅かに安堵して服を捲ると、丸い金の瞳がエンデヴァーをきょとりと見上げた。
「…………」
少し、認識に誤りがあった。
小さくなったには違いないが、サイズだけの問題ではないようである。
短い手足、紅い小さな翼、丸い顔、細くなった髪の毛は少し色が違って見えたが、目の色は変わらない。
珍しい個性だが、前例がないわけでもない。いわゆる、若返り、年齢遡行の能力だと思われる。
これも胎児まで戻ってしまうようなことがあれば命に関わるが、乳幼児で留まったようなので、恐らくは個性の効果が切れさえすれば元に戻るだろう。
そこまで判断してから、エンデヴァーは大きく息を吸い込んだ。
「この……、大莫迦者がッ!!」
火炎を渦巻かせながらの大喝に、雛鳥は背の翼をはためかせて僅かに浮き上がり、ぽてり、と地面に落下した。