King’s Order - 3/3

「本当だ、ホークスの名が入っている……」
「ね?」
 後ろ髪を掻き上げて見せてくれた、奴隷印の主人を刻む箇所には、確かに当人の名が刻まれていて、全く無意味な呪印となっていた。
「俺の主人は俺。俺は自由、なんともない」
「剥がした方がいいのでは?」
「んー、リスクが大きいんだよね。体力無いと死ぬし、下手な術師に任せたら後遺症が残ることもあるみたいだし、特に支障がない以上、リスクが負ってまで剥がしてもっていう」
 それに、と続けて笑った顔は、今まで見たことのないものだった。
「あの人がくれたものだから」
 エンデヴァーという王の噂は知っている。魔物に溢れる国で、暴虐な治世を布く炎の加護を得た王、実は魔王でないかとさえ囁かれ、畏怖される男だ。
 実の息子であるショートは、基本的に育ちの良い穏やかな少年だったが、父親に関することだけは、昏い憎悪を覗かせた。
 師が、こんな顔で語るような人物なのかと戸惑うと、ホークスは苦笑した。
「俺もね、十年くらい裏切られたって思ってたから、もう、本当にアレな人なんだよね。国の方もかなりしっちゃかめっちゃかになってるみたいだし、実際に何があったのかは分からないけど。だから、会いたいんだ」
 遠くを見る目を、何を見ているのだろうと思っていた。
 今なら、その方角がかの王国なのだと知る。
「俺の主は俺だけど、あの人は俺の、王様だから」
 騎士を名乗る青年は、生きろと命の刻まれた刻印を指でなぞって、深く笑んだ。