◆11月
「なあ、靖友。尽八とお付き合いしてみてどうだっ……たッ!?」
言い終わる前に膝蹴りをボディに決めてくれた友人に、新開は言葉を詰まらせた。
「やっぱテメェがなんか吹き込みやがったな?」
「いやあ、それは言いがかりってもんだよ」
好きな相手と付き合いたいのは条理だろうと説いていたら、何故か学園祭の数日間荒北と交際宣言をした東堂に、当事者の荒北とファンクラブの面々が振り回されて終わったハプニングが発生したが、新開は一言も、当人の同意を得ずに付き合えばいいなどと言った覚えはない。
「なんか尽八、学祭前に告白ブーム来ちゃって、対処に困ってたから誰か一人決めて付き合えばとは言ったけどさぁ」
そこで好きな相手を巻き込んだまでは東堂の恋心として、結局何の進展もなく元通りの日常に戻ったようで、二人の友人としては色々と気にかかる。
「お前じゃあるまいし、あの馬鹿が自分の面倒事避けんのに、他の女犠牲にするわけねェだろが。ッの野郎、オレならどんだけファンクラブの連中に文句言われても気にならねェから、オレ巻き込みやがったんだぞ」
「……そういうわけじゃないと思うけどなあ」
東堂が荒北に恋心を自覚していることをよく知っている新開は言葉を濁すが、荒北の中では、今回の件は東堂の理不尽なワガママに巻き込まれただけの事件となっているらしい。
「で、どうだった?」
「何が?」
「ええと、その、お付き合いしてみたら、相手の知らない一面を発見とか」
「今更、あの馬鹿から何を発見すんだよ?」
二年も同じ寮で、部で一緒に過ごし、今年の春からはクラスも同じ二人である。別に交際など宣言しなくても、四六時中側にいる。
「じゃあ、今回のはノーカンとして、やっぱ誰かと付き合いたいなーとか」
東堂の恋愛観は非常に分かりにくいが、荒北もあまり彼女が欲しいといった定番の話題に乗ってくることがないので、今一つ不明瞭だ。
「面倒くせェから、どうでもいい」
想像していたとおりの反応だった。
「かわいい彼女ほしいなーとか」
「ンなの、東堂がいるだろ」
「…………」
大変解せないことに、今、この男は、「かわいい彼女」が欲しくないかと問われて、男の名前を引き合いにして間に合っていると言った。
「尽八でいいの?」
「うるさくて鬱陶しくて面倒でワガママで手間がかかる馬鹿がもういんのに、何でこれ以上面倒増やさなくちゃなんねェんだよ?」
彼の脳内では、彼女とはイコール面倒ごとであるらしい。
だからと言って、ちょっと特異な性格をした男友達と、彼女を同列に語るのは、たぶん一般的ではない。
「…………なんなんだ、もう」
二人とも理解できない、と新開は深々と嘆息した。
