◆10月
春先から色々なことが重なって、少し情緒が不安定だった友人が、最近めっきり落ち着いた。
そう言うと、夏の間休部して塞ぎ込んでいたお前に言われたくないと、正論で刺されて新開は曖昧に笑ってごまかした。察しのよい友人が、どこまで新開の事情を把握しているか知らないが、説明しない新開にそれ以上問いただしてくることはなかった。
その友情に応えるならば、新開も礼儀正しく口を噤むべきなのだろうが。
「いやぁ、なんかいいことあったのかなって、靖友と」
口を挟まないと進展しなさそうな友人の恋を知っているので、どうにも黙れない。
誰にでも人懐こく愛想よく卒なくこなすが、その分人付き合いが希薄な東堂と、人との関わりを拒絶していた荒北が、互いのことは看過できずに衝突し合うのを、周囲は徹底的に相性が悪く仲が悪いのだと判断していたが、新開にはお互いに気になって仕方ないように見えた。
仲良くすればいいのに、と眺めているうちに、それなりに互いに慣れて決めた距離感が、どうにも友情に思えなかった。
その感情を持て余した東堂が、気持ちに反発するように荒北を攻撃して距離をとろうとして、最後にそれが恋だと自覚した姿を、すぐ隣で見ていた。
以来、友人が初めての感情に右往左往している姿も見守ってきたが、夏を過ぎて妙に落ち着いたのが気になる。
「開き直った」
言葉通り、開き直ったのだと知れる口調だった。
「告んの?」
「何でだ」
勢い込んで訊ねると、鼻の頭を指で弾かれた。
「気持ちを否定するだけ無駄だと気が付いた、それだけだ」
「おお」
それでも、大きな進歩だ。
東堂の思考は好きなら好きでいいじゃないか、という新開の考え方とは大きく異なる。
「何の心の迷いか分からんが、オレがアレを好きなのは仕方ない、事実だろう。以上」
「おお?」
気持ちを認めるようになったのは進歩だ。しかし、何か今大きく齟齬があった気がする。
「以上、って何?」
「だから、それで終わりだ」
「好きなんだよな?」
「信じがたいことにな」
「じゃあ、終わりって?」
「好きなものは好きでしょうがないが、別にそれで何が変わるわけでもないと気が付いた」
「……いや、尽八、ちょっと待って」
きょとんとした顔をされるが、それはこっちがしたい表情だ。
「変わるだろ、色々!」
「オレがアレをどう思っていたところで、アレには関係ないだろう? オレはアレを勝手に好きでいればいいし、オレがどう思っていようと、アレはアレのままだ。何も変わらない」
「告白したいとか付き合いたいとか!」
「ない」
迷いなくきっぱりと言い切られて唖然とする。
これを恋愛漫画や小説風に翻訳すれば、告白して今の友達関係すら失うくらいなら、告白なんかしたくない、ずっと片思いのままでいい、という臆病な恋心なのかもしれないが。
そんな繊細さが全く感じられない、突き抜けた物言いだった。
「……ガラパゴス恋愛」
どう迷走して進化したのかさっぱり分からない友人の恋の行く末に、新開は頭を抱えた。
